2008年05月13日

ボーカロイド新ジャンルの提案〜「ぼかりす」の件について周回遅れに一言かいておきますか〜

ええと、初音ミク動画やニコニコをよく見る方はもうご存知の事と思いますが、「ぼかりす(VocaListener)」とは、下の動画

で発表されたもので、大雑把に言うと、録音された人の歌唱を元に初音ミクのVSQファイルを作成するシステムのようです(詳しくは5/28に発表されるらしい)。

で、聴いてみると、確かに非常に「人間くさい」歌い方を実現していて、凄いなあと思わされます。この発想はなかった。いつの世も技術屋さんは面白い事を考えるものです。

現状でも、実際の人間の歌の録音データから音程を抽出してMIDIファイルを作成するソフトは存在し、それを元にミクのデータを作成する方はいらっしゃるようなのですが(特に「しゃべらせる」時に絶大な威力を発揮する)、


さて、そこで問題です。


仮に「ぼかりす」がフリーで配布されたとして、「ぼかりす」はミクを使う人々にとって「当然の前提」になるでしょうか。

結論からいうと、私はならないと思います。
あくまで私見ですが。


もうちょっと正確に言うと、"「ぼかりす」を使うのが当たり前になって、「人間ぽくないボーカロイドの歌わせ方」は消滅する"なんて事にはならず、両方並存していくだろう。といったところです。



なぜかというと、
「ぼかりす」を"ただ使っただけの"ボーカロイドの演奏って、ようするにボイスチェンジャーじゃん。

絵画でも音楽でも、現実のものを基にして何か表現しようとする際に、「現実をそのままトレースしてもしょうがないし出来るわけもない」という壁が存在する事が多いです。ボーカロイドもその例に当てはまるのではないか、と思う。

アニメでいうと、「ぼかりす」は「ロトスコープ」のようなものでしょう。以下wikipediaから引用しますね。

ロトスコープ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
ロトスコープ(rotoscope)はアニメーションの手法のひとつ、またはVFXの手法のひとつ。「ロト」と略すこともあり、動詞として「ロトする」などとも言う。 “ロストスコープ”は誤記。

[編集] ロトスコープ(アニメーション)
モデルの動きをカメラで撮影し、それをトレースしてアニメーションにする手法。(以下略)


最近の映画だと「スキャナーダークリー」なんかが有名ですね。「指輪物語(黒歴史アニメ版。途中で終わる。ひでえ)」でも使われてたけど。

これで作られたアニメは、非常に不思議なリアリティを持ち、なんというかちょっと軽く酩酊感のある映像になります。でも、これがアニメのメインストリームになる事はない。

なぜなら、そこにはデフォルメがないから。
例えば大張正己のバシバシっとした動きとかそういう「アニメ的」な「現実を参照しつつ現実よりもカッコいい表現」というのは、ロトスコープでは(専門外なのであくまで「多分」ですけど)得難い。(まあ、ロトスコープの場合、単純に手間がかかるという問題もあるみたいだけどここでは触れない)。


同じように、ボーカロイドも「人間の実際の歌を参照しつつ人間の歌をデフォルメしたカッコいい(カワイイでも萌えるでもOK)歌い方」ができる(かも)ところにも意義があり、「人間ぽく」歌わせるのも「人間ぽくなくでもカッコよく」歌わせるのもどちらも価値があると考えられる。というか私はそう考え、人間ぽさとは一歩離れた所で「hatsune phase」や「雪」を作りました。上手くいったかはともかくとして。


だから、仮に「ぼかりす」が安価で普及したとしても、それがその他の歌わせ方を駆逐することはない、と思います。というか、「ぼかりす」で人間らしく歌わせるのが絶対の前提になったなら、そのときはボーカロイドは前述のように単なるボイスチェンジャーになってしまうわけで、そうなればもはやボーカロイドは楽器ではなくて、DAWの単なる一機能にすぎなくなり、ボーカロイドの歴史は終わると思います。

だから、「ボーカロイドを人間ぽく歌わせた上で何かする方向」と「ボーカロイドを人間の歌とは違ったデフォルメされた歌にしていく方向」両方並存する形になるのかな、という結論になるわけです。


でね、ここで終わりと思うなよ。


思いついたのです。「ぼかりす」の楽しい使い方を。
基本的に、あれって、録音データをボーカロイドのVSQファイルに変換する技術だと予想されるので、

元にできる録音データは人間の歌に限らないんじゃないんだろうか。
つまりですね、自然音や、自動車のエンジン音とかサイレンとか効果音とか、そういったものをボーカロイドの声に変換する事ができるんじゃないでしょうか。

20世紀中ごろに発生した現代音楽の技法というかジャンルに、「ミュージックコンクレート(具体音楽)」(wikipediaリンク)という大雑把に言うと楽器の音以外を録音して切り張りして音楽にするという今のブレイクビーツの先祖みたいなものがあるのですが、

「みっくみくコンクレート」ってありじゃね?

「ぼかりす」によってこの世界の全ての音を新たな音楽素材に変換するツールとしての機能をボーカロイドが持ちえるかもしれない。

ちょっとワクワクしてきませんか?私はします。というか誰かやって!

参考にミュージックコンクレートで有名な作曲家ピエール・アンリの演奏を貼っておきます。あまりこのジャンル把握してないので、これが適切な例か分からないのだけど。


でもこの不思議な感覚が初音ミクの音で再現できたら、それは結構ドキドキする気がするなあ。

というわけで、面白い技術を考えるのが技術屋さんの仕事。それをどう面白がるのかが僕らの仕事だよね、って話でした。

ドキドキするといえば、ミクで楽器の音を模したようなこれ

にもドキドキした。「そこは冨田勲が数十年前に通過した場所だ」という意見もあると思うけど、単純に音として気持ち良い。

ピエール・アンリのCD。国内盤は軒並み廃盤なのが切ない。



冨田勲といえばやっぱりこれですよね。今聴いても充分新鮮。

ちょっとかじってみたい向きにはこちら。
posted by animebrass(ぶろぐぬし) at 01:27 | Comment(2) | TrackBack(0) | 雑記 このエントリーを含むはてなブックマーク
この記事へのコメント
もともとが歌い手の代わりとしてのヴォーカロイドですからね
自身に歌唱能力があるなら「ぼかりす」を使うのもアリですし、無いなら結局使うのは難しいというだけの事かと思います。
人間的に歌わせたい、しかしDTMでの打ち込みは面倒で良くわからない
といった、打ち込みによる種々細々した調整に疎い人には願ってもないツールではないでしょうか
こういった需要は無視すべきではないですよね
Posted by 774 at 2008年05月16日 17:05
>774様
駄文、読んでくださってありがとうございます。
>こういった需要は無視すべきではないですよね
そうですね。入力方法の選択肢が増えるのは裾野を広げる上で有意義な事だと思います。

ボーカロイドを使いやすくするツールとして使われるのもありだし、ボーカロイドを使って変な事をするツールとして使われるのもまたありだと思います。

面白い音楽を生み出すツールとして機能してくれる事を願うばかりです。
Posted by ぶろぐぬし at 2008年05月17日 07:26
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